※ 一度溶媒ボトルを開封した場合、空気中の水分を吸収し、プロトン交換が急速に起こるため、精度の高い実験を行うには、アンプル製品のご利用をお奨めします。
High Throughput NMR用溶媒
- 連続的なNMRサンプル自動測定
- 創薬プロセスに有用
上記「High Resolution NMR」もしくは「Routine NMR」用溶媒から、実施される実験条件やご希望のスペクトル品質に応じてお選びください。
適切な同位体純度の選び方
適切なNMR溶媒および同位体純度の選択は、サンプル量に大きく依存します。1H-NMRのための重水素化溶媒の同位体純度を選択する場合、溶媒由来の妨害を避けることが重要となります。以下の表は、NMR溶媒の同位体純度を選択するためのおよその目安を示したものです。
Sample Mass
MW=250 |
Molar Sample
Concentration |
Min. Solvent
Isotopic Purity |
---|
12.5 mg |
0.1 M |
99.0% |
6 mg |
0.05 M |
99.5% |
2.5 mg |
0.02 M |
99.8% |
1 mg |
0.005 M |
99.95% |
*Reprinted with permission of Wilmad-LabGlass.
Air-Sensitive NMR用溶媒
- 空気や水分に敏感なサンプル
- 真空や不活性ガス下での測定
- 制御された環境下での測定
製品番号
|
溶媒 |
---|
569550 |
Acetonitrile-d3 ≥99.8 atom % D, (water <10 ppm) |
570680 |
Benzene-d6, 99.6 atom % D (water <10 ppm) |
570699 |
Chloroform-d, 99.8 atom % D (water <10 ppm) |
570672 |
DMSO-d6, 99.9 atom % D (water <50 ppm) |
569534 |
Methanol-d4, 99.8 atom % D (water <50 ppm) |
570710 |
トルエン-d8, 99.6 atom % D (water <10 ppm) |
NMR溶媒の取り扱い方法
重水素化されたNMR溶媒の多くは容易に吸湿します。水の混入を最小限に抑えるには、入念に乾燥させたNMRサンプル管を使用し、乾燥雰囲気下でNMR溶媒を取り扱います。
表面の水分を除去する方法
- ガラス器具を約150℃で24時間乾燥させ、不活性ガス雰囲気下で冷却します。
- サンプルを調製する前に重水素化溶媒でNMRサンプル管をすすぎます。これによってガラス表面に残った水を置換することができます。
- 簡略化する場合は、窒素雰囲気下でサンプルを調製するだけでも良いでしょう。
不純物の混入を防ぐ方法
- 清潔で乾燥したガラス器具とPTFE製の器具を使用します。
- サンプル管に入れた試料と溶媒は振とうではなく、ボルテックスミキサーで混合することをお勧めします。振とうするとサンプル管のキャップに付いた不純物が混入するおそれがあるからです。
- 実験器具に残った溶媒蒸気が不純物の原因になることがあります。典型的な例としてスポイトキャップに残ったアセトンが見られます。
残留溶媒の除去方法
- プロトン溶媒は共蒸発させることによって取り除くことができます。
- 少量の重水素化溶媒を使って、真空下で短時間(5~10分)の乾燥を行った後にNMR試料を調製します。
- クロロホルム-d、ベンゼン-d6、トルエン-d8などの溶媒を用いると残留水分も共沸によって除去されます。
TMSの蒸発を防ぐ方法
- TMS含有溶媒を長期間保管するとTMSが揮発して濃度が低下することがあります。このような溶媒はSure/Seal ボトルに入れて保管するとTMS量の減少をほぼ防ぐことができます*。
- あるいは、アンプルに入った使い切りのTMS含有溶媒の使用をお勧めします。
* Sure/Seal ボトルまたはセプタムバイアルからTMS含有溶媒を取り出す際は、標準的なシリンジ操作を行います。詳細と推奨手順についてはAldrich Technical Bulletin AL-134(PDF:3.6MB)をご覧ください。
重水素化溶媒における“Double Water Peaks”
CDCl3、アセトン-d6、CD3CNおよびDMSO-d6のようなNMR溶媒では、製造プロセスや保管状態に起因する微量水分の混入が必ず見られます。一般的には、重水素化溶媒中で水は、「HOH、HOD、DOD」の3つの形態をとります。純粋なNMR溶媒のプロトンNMRスペクトルでは、HOHとHODピークの両方が観察されますが、DODは観測されません。
1H-NMRスペクトルにおいて、HOHはシングレットとして現れます。しかし、核スピン量子数I = 1を有するD核とのカップリングのために、HODはトリプレットとして現れます。観測されるHODピークの結合定数2JHDは、約1〜2Hzです。HOHとHODのプロトンに関する化学的環境は類似しているものの、完全に同一ではありません。そのため、HOHとHODのピークは近い化学シフトをとりますが、重複はせず、一般的には0.03 ppmほどの差があります。
以下に示したNMRスペクトルには、アセトン-d6のHOHおよびHODピークが見られます。このスペクトルからは、報告されている化学シフトおよびカップリング定数が読み取れます。

アセトン-d6溶媒の1H-NMRスペクトル(Varian Mercury 400 MHzにて測定)
アセトン-d6残留ピークは、2.04 ppmを中心とするクインテット(結合定数:2JHD = 2.11 Hz)として現れます。13C に由来するサテライトピークが、約150 Hz離れた、アセトン-d6残留ピークの両側にかろうじて見ることができます。H2Oピークは2.82 ppmにシングレットとして、HODピークは2.78 ppmにトリプレット(結合定数:2JHD = 2.07 Hz)として現れます。
【参考】各種重溶媒中の化学シフト一覧(PDF:0.5MB、1H NMR Chemical Shift Laboratory Data Guide, NMR Solvents Reference Data)